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2011年9月19日月曜日

回想のギリシア旅行その4(クレタ島2日目)

2010年12月27日 クノッソス、イラクリオン考古学博物館、ザロス


 午前中、ミノア文明を代表する遺跡クノッソスへ。
 1900年イギリスのサー・アーサー・エヴァンズによって発掘されたこの大遺跡は、紀元前1625年頃、火災で焼け落ちたと推定されるそれまでの旧王宮のあとに建てられた。この新王宮も紀元前1375年頃に火災で焼け落ちる。


「ユリの王子」
女王の間のイルカのフレスコ
 遺跡の数カ所にフレスコ画があるが、これらはエヴァンズが復元したもの。フレスコ画に限らず、クノッソスに施したエヴァンズの「復元」のやり方には批判が多い。そのせいか、これだけ重要な遺跡でありながらいまだ世界遺産に登録されていない。





複雑な階層構造
 (→) 南門の建物。赤く塗られた柱はエヴァンズの復元。遠くにユクタス山が見える。ミノア時代の遺跡は中心線が聖なる山に向かっている、というのがK先生の仮説。


 重要な遺構は中央にある広場の西側に集中している。複雑な階層構造をなし、その3で触れたミノス王のラビリントス(迷宮)跡だと言われたことさえある。多くの出土品は現在イラクリオン考古学博物館におさめられている。

(←) 出土した「蛇の女神」(イラクリオン考古学博物館)。
 向かって左の女神の両腕に蛇が巻き付いている。右は両手に蛇を持っている。蛇は大地と結びつきが強い。豊かな乳房とともに、大地の豊饒の力をあらわす大地母神的な女神かもしれない。


「王座の間」フレスコは再現。床の水盤は
もともとここにあったものではない。

 20年前は下の倉庫区画まで下りることができたし、「王座の間」ももっと見ることができた。現在は遺跡保護のために入場できる場所が限定されている。

 20年前、イラクリオンで出会ったスペイン人の若者と民宿に同宿した。クノッソス宮殿に誘うと「なんだ、それは」と言う。彼は英語があまりできないので、英語といい加減なフランス語と、ラテン語まで混ぜて説明すると「暇だからつきあう」と。
 クノッソスで王宮の階段を下りていくあたりから彼が「すごいすごい」と興奮し始めた。「何がすごいんだ」と尋ねると、
倉庫区画にある大きな貯蔵用の壺
テラコッタの給水設備
「お前、わからないのか。この階段の脇に溝が掘ってあってところどころ穴が開いているだろう。ここを雨水が通って穴から下の大瓶にたまるようになってるんだ。何千年も前のものとは信じられない」。
雄牛のリュトン。
イラクリオン考古学博物館
 そう、彼の仕事は配管工だったのです。彼を誘わなければクノッソスの給排水施設に注意が向かなかった。なお、彼はホモセクシュアルでしたが、最初に「おれはストレートだ。おれたちはただの友達だ」と納得させたので二晩何事も起きませんでした。いい奴でした。
カマレスの壺


(←) 北の端にある「劇場」。演劇が上演されたわけではなく、何らかの宗教祭儀のための広場だったらしい。奥の道の先に「小王宮」があり、そこから有名な「雄牛のリュトン」が見つかった。





カマレス様式だがフェストス
から出土した壺。美しい。





 午後はイラクリオン考古学博物館へ。イダ山にあるカマレスの洞窟から出た美しい壺など、ミノア文明の遺物は応えがある。
タコを絵柄にした壺









 クリスマスから年末のオフシーズンなので大人数が入れるおいしいタベルナが見つけにくく、山間の小さな村(ザロス)に行くことになった。クレタの郷土料理を食べるためだけに行った村だが予想外に楽しいところだった。


 坂が多い村の景色がたのしい。中年の男が呼び止めて「まだ開設してないが村の民具の博物館にしようと思っている。見ていかないか」と誘い入れられた。今はバーになっている。片隅に古いオリーブ絞り器があってこれが目玉となる民具のようだった。雰囲気のある建物で、バーのままの方が客が入るんじゃないかと思ったがさすがに言えなかった。


クレタ料理フルコースのメインは鶏肉の雑炊。地鶏の茹で汁で米を煮たシンプルなものだったが味わい深くすばらしかった。
 長い食事を終えて外に出ると夕闇。
立派な英語を話す村人(あとで聞いたら引退した元観光ガイド)が話しかけてきて、この村にクレタ島の民族楽器を制作するただ一人の職人の店があるから見に行かないかと言う。喜んで案内してもらう。狭い店内には螺鈿で細工をほどこした美しい楽器が所狭しと並んでいる。店主は若い頃は踊れるミュージシャンとして名を馳せたという。若いときの写真が壁に飾ってあるが、なんと店主は人の頭の上で踊っている! トリック写真ではなさそうだ。
タベルナの入口
葡萄の葉で米を包んだドルマデス。
定番の前菜だが店ごとに味が違う。
山盛りの茹で地鶏

鳥の茹で汁で似た雑炊
店主は「記念に」と言って「ミノア時代から続く最古の笛」を皆にくれた。カミソリで切り込みを入れてリードを作るのだが、わたしたち一人一人の顔を正面から見てリードを切り込んでいく。口の形に合わせて作らないと音が出ないそうだ。帰国して吹いた笛からは古式豊かな音が鳴り響いた。


夕闇の中をイラクリオン空港に向かい、アテネに戻った。

クレタ風デザート。甘い餅に
アイスクリームが載っている。

1 件のコメント:

  1. とても魅力的な記事でした。
    また遊びに来ます!!

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