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2014年1月1日水曜日

くちびるつんと尖らせて(大滝詠一追悼)

皆様、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


新年早々、追悼文を書くことになってしまいました。

大滝詠一が亡くなった! 
胸に穴が空いたような気持ちです。 
老いぼれになってもしゃれた音楽を作り続ける人だろうと勝手に思い込んでいたのに。

細野晴臣とやってた「はっぴいえんど」、山下達郎・大貫妙子がいた「シュガー・ベイブ」のプロデュースなど、そのりっぱな仕事は昨日からすでにあちこちで紹介されています。ですのであらためてくどくど書くことはしません。 

洋楽を学びに学んで、作り込んだ音。 
日本語のポップスの可能性を切り開いた一人です。
その点では似ている山下達郎が「音楽の修行僧」のようなストイックな印象を与えるのとちがって、
大滝詠一には「遊びの心」がいっぱいあふれていました。 

昨夜はアルバム「A Long Vacation」(1981) をずっと聴いていました。  
空間の広がりを感じさせる音。 
若かった頃、
「カナリア諸島」でまだ見ぬ南の島のゆるやかな時間に想像をはせ、 
「我が心のピンボール」や「恋するカレン」のせつなさにしびれました。 

聴き返すと、
日本語をポピュラーソングの音に乗せる
その巧みさにあらためて驚きます。

冒頭「君は天然色」の歌い出し

「くーちびるー つんとー とがらーせーてー
なーにか たーくらむー ひょうじょうはーー
わ・か・れの けはーいーをー ポケーットーにー
かーくうして いーたーかあらあーー」

松本隆のおしゃれな詞にこれ以外のどんなメロディーがあるんだ、
と思うくらいにぴったりの音。
流れる長音の二行のあとに
「わ・か・れ」
が「別れ」の分断を音で伝えてます。

おしゃれなこの曲が、「ひと夏の悲恋」というこのアルバム全体の実は切ない物語のイントロダクションにもなっています。

そして最後の曲が「さらばシベリア鉄道」。
カナリア諸島、夏の海辺のパーティーから一転して雪の世界で終わる。
「天然色」からモノクロームの世界へ。
遊び心にあふれた美しくてせつないアルバムです。


「薄く切ったオレンジ」ではなくリンゴを喉につまらせるなんて。
大滝詠一さん、安らかに眠らないで
向こうの世界でも歌を作って下さい。
心から追悼いたします。


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