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2014年12月17日水曜日

ドラマの心意気——『相棒』Season13「サイドストーリー」

今日の『相棒』「サイドストーリー」はシーズン13で出色の出来でした。

右京は、介護ノートに記された2種類のレシピで肉じゃがを作って、事件の核心に近づいていく。
タイトルどおり、
被害者にストーカー行為を働いていた元夫、
被害者の愛人とされていた男、
被害者の親が警察にかけた匿名通報など、
いくつもの「サイドストーリー」が、ジグソーパズルの最後の一片で絵が完成するように融合する。

ドラマの構成が緻密。
右京と甲斐君のエプロン姿というマニアをくすぐるお遊びもあります。


でもそれだけじゃなくて。
脚本家をはじめとするスタッフの心意気が感じられる一篇。

脚本は医療・介護総合確保推進法に象徴される安倍内閣の介護への動きを意識して書かれたものだと思う。

声高な主張はせず、緻密な推理ドラマに徹しているからこそ、

かえってスタッフの心意気を感じます。

テレビドラマはもちろんエンターテインメントとして優れていなければならない。

けれど一方で、
多くの視聴者を抱えるテレビドラマには
「国民の文化」みたいなものを形成する責任も歴然としてあります。

もちろん「国民の文化」が何なのかは一律ではない。
しかし、
「今主流となっている動きへの批判的視線」が

健全な「国民の文化」形成にはかならず必要だと思います。
批判と批判に耐える精神を欠いた国民文化は脆弱です。

ドラマはフィクションであるからこそ

かえって声高な主張より強い「批判的視線」でありうる。
ドラマがこぞってそうなる必要はないし、そうなってしまうとこれはこれで息が詰まる。
けれども
そういうドラマがどこかに存在していることは必要です。

『相棒』はそういう「今主流となっている動きへの批判」の心意気をときどき見せる。
今日の「サイドストーリー」はその系列の良質な作品だと思いました。


仲間由紀恵主演の『トリック』を思い起こしました。
おもしろおかしいドタバタ推理ドラマなんだけど、
『トリック』はオウム真理教事件への真摯な反応でした。
エンターテインメントとしての完成と社会への問題提起の融合。
そういう心意気が共通しています。
テレ朝がんばれ。