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2015年2月24日火曜日

横浜中華街の想い出

横浜中華街にたいして行ってないんです。
ハマッコの皆様、すみません。

「マラドーナと間違えられた男のお話」の続きみたいな想い出です。

マラドーナと間違えられた男は、

大学の少林寺拳法部の後輩でした。

浅草生まれの浅草育ち。

クルマが好きでした。学生なのにクルマを乗り回していた。
免許すら持っていなかったわたしにクルマの魅力を教えてくれたのも彼、K君です。


K君のクルマ、最初は古い丸っこいボルボだったかな。

そのあと、ランチア・デルタ・インテグラーレというイタリア車に替えた。
ラリーに出ていた伝説のクルマです。

K君は不意にクラブの仲間を引き連れて横浜中華街に出かけます。


彼が誘いに来ると数百メートルくらい前から音でわかります。

ブッバババババン、バララララララアーーーーッ、
というエンジン音が聞こえてくるのです。

大きくないランチア・デルタ・インテグラーレにギュウギュウ詰めになって中華街に向かいます。




彼が好きだったのは中華街というよりはずれにあった小さな店。

牡蠣油そばをよく食べに行きました。
おいしかったなーー。

それから中華街で有名な「悟空」というお茶屋。

中国茶を買って楽しんだ。
その「悟空」で店員さんと中国語で話していたK君を見ていたのか、
ひとりのおばさんがプーアル茶を指さしてK君に
「えーーーー、あのーーー、このお茶は・・・」
と質問しかけて言いよどんだ。

K君は「痩せるかどうかですか?」

と聞き返した。

おばさん、

「あらまあっ! どうしてわかるの?」
K君すかさず、
「見たらすぐわかりますよ」。

失礼きわまりないといえばそうなんですが、

その口調があまりにみごとで、おばさんも笑い出した。



みんなで遠出もした。

K君、ちょっと書けないようなスピードで飛ばした。
ランチア・デルタ・インテグラーレはものすごい加速で、
背中がシートに押しつけられ、頬の肉が後ろにひっぱられる。

「ふふふふふ、歩きのオスさん、加速っていいでしょ?」


はい、良かったです。

その魅力を教えてもらいました。

箱根ターンパイクの一車線の道で追い越しをかける。

のだけれど、左ハンドルだから対向車線がよく見えない。

「歩きのオスさん、抜ける? 抜ける?」

と聞いてくる。

あのーー、わたし、免許持ってないんですけど。

でも命がけで対向車線を見た。

「行けるっ!」と声をかけると、

跳ね馬のようにランチアが対向車線に飛び出していっきに追い越す。

スリル満点だったけれど、

クルマの運転は目と体の感覚なんだ、といういちばん大事なことを教わった気がします。


K君、飛ばすけれどけっして乱暴ではなかった。

飛ばすべきではないときにはみごとなぐらいにスピードを落とした。


クルマは思い立ったときに出かける自由な翼で、
その翼をあやつるためには、
体中を敏感にして踊るように躍動させていなければならない。
免許を持っていないわたしはランチア・デルタ・インテグラーレの助手席でそれを学びました。


楽しかったな。



2015年2月22日日曜日

吉祥寺「ザ・パッション」

吉祥のイタリアン「ザ・パッション」のランチをときどき食べます。
おいしいので一度夜来たいと思ってました。
で、今日家族と、知り合いの中国人の娘さんとともにはじめて夜の食事。

階段を上がった2階が入口。
昼間と違って雰囲気がある。

繁盛してます。

店内は暗め。
わたしは暗いのが好きですが、慣れてないカメラで写真がうまく撮れなかった。



 最初は白ワインを飲みながら、
マッシュルームと
パルミジャーノのサラダ
「マッシュルームとパルミジャーノのサラダ」
「温野菜のガーリックとアンチョビーのサラダ」。
どちらもおいしい。

ランチの前菜に入っていて感心したことがある
「京都丹波きのこのバルサミコソース」がメニューにあったので家族に食べさせたくてこれも注文。きのこ自体の味が濃厚で、それを活かすように塩とバルサミコで控えめな味つけにしてあります。かなりおいしい。


「牛ギアラとほうれん草の煮込み」
が来た辺りで赤に切り替えました。
牛ギアラとほうれん草の煮込み
ギアラ(第4胃)とほうれん草がよく合います。
トリッパ(牛の第2胃)のトマト煮は定番ですが、
イタリアンのギアラははじめてです。
トマトソースじゃないところがいい。中国人のYちゃんもおいしそうに食べる。
さすがは内臓料理の国の娘さんです。

店内禁煙なので、
タバコを吸いに入口外に。
下は井の頭公園につながる南口でいちばんにぎやかな通りなので、
週末のそぞろ歩きをする人たちが店を物色しながら通る。
いい雰囲気です。


フォアグラとイチジクのテリーヌ
だんだんしっかりした料理に進んで
「豚のスペアリブ」
「フォアグラといちじくのテリーヌ」。
どちらもルッコラがたっぷり添えてある。
テリーヌ最高。赤ワインと合います。

「生ハムとポルチーニ茸のリゾット」
はちょっと塩気が強いが、添えてある温玉を崩すと味がマイルドになります。
生ハムとポルチーニのリゾット



「おいしい」とみんなで食べていると、隣のテーブルの家族連れが
「それ何ですか? わたしたちも頼みたいんですが」
と声をかけてきた。

メインは牛肉のカルパッチョ風。
脂の乗ったしっかり肉です。

そのほか二,三品頼んだと思いますが忘れました。

たらふく飲んで食べて、デザートとコーヒーもとって、4人で2万円弱でした。
高級な雰囲気はなく、適度に古びたくつろげる空間。
狭苦しくはありません。
わたしは窓際の席から見える吉祥寺らしい通りの景色が好きです。
店員さんも親切。
入れ墨のイタリア人(だと思う)イケメン君もとても感じがいい。

わたしたちはグラスワインでしたがここのグラスワインは悪くない。

大満足。
「カプリチョーザ」がなくなって以後、吉祥寺のイタリアンはちょっとさびしいなあ、と思っていました。

近くの「ヴァ・ベーネ」もおいしいのだが(特にクリームソースパスタ)、
どちらかというと夜は「肉のグリルいのち!」みたいな感じで、
そうなるとランチと違ってお安くない。

その向かいの「プリミ・バチ」は高い割に味はふつう。

ネットで割に評価が高い「マザーズ」は野菜の質がいいし味も悪くないが、
パスタとピザの店なのでちゃんとしたメインの料理はない。軽食の店ですね。

「ザ・パッション」の夜、気に入りました。
カフェやバルやじゃなくてしっかり料理を食べてワインを飲むならお勧めです。


2015年2月20日金曜日

マラドーナと間違えられた男のお話


イタリアでマラドーナと間違えられた後輩の話は「タコの溺れ煮パスタ」に書きました。
かりにK君としておきます。

K君は浅草生まれの浅草育ち。生粋の江戸っ子です。
べらんめえだけどその語り口がほれぼれするくらいみごとで、わたしは彼と出会って生まれてはじめて伝統的な日本語の美しさをライブで感じることができました。

なんだけれど、
マラドーナに間違えられるくらいラテンっぽい風体です。
背は低い。
でも胸板が厚くて、その胸板の上に太い首がのっかっている。
ラテン男の体型です。

彼ほどじゃないけど、
わたしもヨーロッパで「日本人か?」と聞かれたことが少ない。
大学の研修旅行で学生をヨーロッパに引率していったとき、
ローマのスペイン階段にすわってタバコを吸ってたのですが、
すぐそばにいる添乗員と学生が「歩きのオス先生がいない!」と騒いでいる。

「ここにいますよ」
と言うと、みんなうわっと驚いて
「あまりに周りの景色に溶け込んでいてわからなかった!」
と言いました。


そんな共通点があるからなのか、K君とはいろんな思い出があります。

ロンドンのソーホーで二人で小さな中華料理屋に入った。
店員はもちろん全員中国人。

二人でいろんなものを頼んで食べながらおしゃべりした。
おいしい店でした。

ウェイトレスがとてもキュートだった。

1時間ばかりたったとき、そのキュートなウェイトレスが寄ってきて、
「すみません。あなたたちは日本人ですか?」
と尋ねた。

「そうだ」と答えると、彼女はパッと顔を輝かせて手を打った。
奥の厨房のみんなが「くそーーー!」みたいな仕草をしてた。

みんな中国人だと言って、彼女だけが「日本人だ」と主張し、賭をしたそうです。
彼女はずるをしてた。
だってわたしたちが日本語で話をしてるのを聞いてたんだから。



それから。

やはりロンドンのソーホーのタイ料理屋にはいったとき、
二人で前菜から主菜まで10数品を注文しました。

ウェイトレスは
「たぶんあなたたちは注文しすぎてると思う。多すぎます」
と忠告してくれた。

わたしは
「大丈夫だ。わたしたちはふつうの日本人ではない」
と答えました。

テーブルにあふれんばかりのおいしいタイ料理を二人で次から次に平らげました。
デザートも追加しました。
いやーー、あの頃はほんとに食べられた。

ヨーロッパのレストランで「量が多すぎる」と思ったことは一度もなかった。
K君も大食漢だった。


わたしは「小食のグルメ」を信用しません。
『ガルガンチュア物語』みたいに、
がつがつグワーーーっと食べてこそ食物のおいしさがわかるんだと思う。
生きるものを殺戮して摂取する人間の業(ごう)と隣り合ってこその食文化。


わたしは量は食べたけれどグルメだと思ったことは一度もない。
胃が小さくなった今はなおさらです。
でも食べることと食べるものを作ることは大好きです。
飲むことも。


K君とは食べて飲むことをほんとに共有した。

K君、音信不通です。
わたしの仲間のだれも消息をしらない。

生きているか? 元気でいるか?
またいっしょにソーホーに行こうよ。




2015年2月18日水曜日

「鮎川教授最後の授業」——『相棒』Season13

(ネタバレあり。注意)

オープン・エンドのカタルシス
今日の『相棒』で感じたのはそれです。


説明しますと。
「オープン・エンド」というのははっきりした結論がないまま物語が終わることです。


ふつう、物語は紆余曲折の末になんらかの結末もしくは解決にいたる。
紆余曲折の発端はなんらかの「紛糾」です。
説明・解決できなさそうな困った状況、くらいに理解するとよい。

「紛糾」は登場人物をなんらかの行為に駆り立てます。
人間は、困った状況のままには耐えられないから。
だから「紛糾」は筋(プロット)を推進していく大きな力です。

紛糾が解決されて結末にいたったとき、一応筋は完結します。
解決されたとき、登場人物には何らかの変化が生じている。
どんな変化かはさまざまです。
でもかならず変化が起きる。



そしてその変化はなぜか受け手にある種の解放感をもたらす。


アリストテレス『詩学』
松本仁助・岡道夫訳
岩波文庫
ギリシアの哲学者アリストテレスは、ギリシア悲劇を論じた『詩学』で、その解放感を「カタルシス(浄化)」と呼んでいます。

わたしたちが物語に惹かれ、自分で物語を語りたくなる秘密はそういうカタルシスにあるのかもしれません。

ふつうわたしたちはカタルシスをもたらすような物語を「物語」だと思っています。そしてテレビドラマや映画のほとんどはそういう物語を紡ぎ出しています。
そういう物語にわたしたちは「感動する」。



それに対して、オープン・エンドはカタルシスをもたらさない。
紆余曲折の果てにたどりついた終わりがどういう意味を持つのか、それを明確にしない。
受け手はいわば宙吊りにされる。着地点が見つからない。

あえてそういう終わり方をする小説やドラマや映画があります。

「感動なんかさせないんだもんねーー、
受け手を宙吊りにしたまま困らせてやるんだもんねーー」
というスタンスの表現。
だからオープン・エンドの作品がカタルシスをもたらすことはふつうではあり得ない。

そういうのがつまらない作品なのかというとそうでもありません。
「なんなんだ、この終わり方は?」と感じながら宙吊りにされることで、受け手はいろんなことを考えてしまう。
(考えないで「つまらん作品だ。ポイッ」と片づけるのも受け取り方のひとつではあります)
ともかくそれを目指している作品もあるんだということです。


以上で「オープン・エンド」と「カタルシス」の説明はおしまいっ。




で、今日の『相棒』なんですが。


いつもの『相棒』はカタルシスを目指して筋が進みます。

殺人などの事件が起きる。
でもそこに説明のつかない不審な点がある。
杉下右京だけがその不審な点に気づく。
右京が上で述べた「紛糾」を生じさせるわけです。

右京は事件の「真実」を明らかにするという行動を取る。
右京の卓越した推理力によって真実が明らかにされ「解決」にいたる。
受け手はそこにカタルシスを感じる。

そういう点では『相棒』は推理ドラマの「物語の定型」に忠実に従っています。
筋の推進力のパワーが凡百の推理ドラマとはけた外れに大きいですが。


2回にわたる「鮎川教授最後の授業」もとりあえずその定型に従っています。

東大法学部の鮎川元教授の別荘に門下生たちが集まる。
右京も、内閣情報調査室の社美彌子(やしろみやこ)も、鮎川教授の門下生だった。

鮎川教授は門下生たちを地下室に閉じ込め、
「なぜ人間は殺人を犯してはいけないのか」
という課題を与える。

納得できる解答が出なかった場合、門下生たち全員を猟銃で射殺する。
鮎川はそう宣言します。


最初の犠牲者、家政婦の御堂黎子(みどうれいこ)に鮎川が猟銃を向けたとき、
彼女は拳銃で鮎川を射殺する。


なぜ鮎川教授はこの監禁事件を起こしたのか?
なぜ御堂黎子は鮎川を射殺したのか?

この「紛糾」に右京はみごとに解決をつけて事件の真相を明らかにする。

推理ドラマの「カタルシス」があります。



でもほんとうにそうだろうか?


御堂黎子の殺人は状況としては正当防衛だ。
しかしその背景には御堂黎子の鮎川教授への殺意があった。


右京は御堂黎子に問いかけます。
引き金を引いたとき、あなたにほんとうに殺意はありませんでしたか?

殺意がなければ正当防衛。あれば殺人。
その真実を明らかにしなければなりません。

そう右京は問います。

御堂黎子は殺意を認める。



事件の「真相」は明らかになった。
ように見える。


でも。
ほんとうにそうでしょうか。

御堂黎子の殺意の認知でドラマはカタルシスをもたらしたかに思える。


しかし最後の1分ほどでそのカタルシスがくつがえされます。
くつがえすのは右京ではなく社美彌子。


引き金を引いたときの御堂黎子の心は空白だったのではないか。
それまで殺意を培っていたのは事実だとしても、
「あのときあなたに殺意はほんとうにありませんでしたか?」
という右京の問いによって、
御堂黎子は
「殺意があったのだ」と思い込んだのではないか。

それが社美彌子の大きな問いです。
右京のみごとな真相解明がまちがっているのかもしれないという問い。
「でもあなたの推理が当たっているのかもしれません」
とも社は言ってドラマは終わる。
オープン・エンドです。



矛盾しているように思われるかもしれませんが、
わたしはこの終わりにカタルシスを感じました。



御堂黎子を演じる石野真子はほんとに地味で、なんでこんなキャストを選んだんだとずっと思ってました。石野真子をぜんぜん活かしていないじゃないか!

でもその地味ではっきりしない人物像が最後に活きてくる。
母の復讐のために鮎川教授を殺そうと思いながらもあいまいな人間なんです、御堂黎子は。鮎川教授が見抜いたとおり「優しすぎる人間」です。

拳銃を構えた彼女には復讐の実現を勝ち誇るようすがいっさいありません。


少なくともわたしは殺意を認めたときの御堂黎子に、殺意への確信を見てとることはできませんでした。揺れ動きながら殺意を認めている感じ。

それはほんとうに事件の真相なんだろうか?

そういう疑問を社美彌子はみごとに表現してくれた気がします。
そこにわたしはカタルシスを感じてしまいました。

このカタルシスはいつもの『相棒』のカタルシスとはちがいます。
いつものカタルシスは「謎に見えた事件の真相がみごとに解明されたカタルシス」です。
でも今回のカタルシスは、美しくまとまった杉下右京の「鮎川教授殺人事件の物語」を相対化してしまうような社美彌子の問いからもたらされています。

なんと言えばいいのでしょう。

右京のみごとな「真相の解明」をさらに包み込むような大きな視点が『相棒』にあるんだという発見のカタルシス、と言えばいいのでしょうか。

いつもの右京の「真相の解明」はそれ自体で質の高いものです。
『相棒』の魅力はもちろんそこにある。

でも、その美しい箱をさらに包んでいるもっと大きな箱がある。
それが『相棒』なんだよ。

それを受け取れたことがいつものカタルシスよりもっと大きなカタルシスだった。

「オープンエンドのカタルシス」と書いたのはそういうことです。
伝わるでしょうか?




そして「鮎川教授の最後の授業」にはもうひとつのオープンエンドがあります。
このオープンエンドにはカタルシスがない。

鮎川教授の
「人間はなぜ殺人を犯してはならないのか。その理由を述べよ」
という問題への右京の答案はなんだったのかです。


終わり近くで右京は「人がなぜ殺人を犯してはならないかを説明することはできませんが・・・」とさらりと言っていますが。

鮎川教授は右京の答案を「みごとな答案だ。力作だ」と言いました。
社美彌子の答案も「力作だ」だが「及第点は与えられない」とも。

しかし、
右京の答案に「及第点を与えられない」とは言っていません。
及第点だったのではないでしょうか。

右京は「人間がなぜ殺人を犯してはならないのか」に正しい解答を出していたのではないでしょうか。


ああ。
右京の答案の上半分が画面に一瞬映っていた。

そこに何が書いてあったのかを知りたい。
でもその答えを右京は言わないし、視聴者にも伝えられない。

これこそカタルシスのないオープンエンドです。
いつか明かされるかもしれないその答案を見たくてわたしは『相棒』を見続けることでしょう。

2015年2月13日金曜日

百合根の白和え

百合根の季節。ほくほくしておいしいです。
それを白和えにしました。


百合根の白和えの作り方


《材料》(2〜3人分)
百合根         1玉
キクラゲ        5~6枚
豆腐          1/2丁
青ネギ         適量
青野菜(スナップインゲンや菜花など) 少量
白だし         市販のもの適量
塩           


【作り方

1) 豆腐をザルに入れて重しを置いて水切りする。キクラゲをぬるま湯で戻す。

2) 青野菜を茹でてぶつ切りにする。茹でた湯は捨てない方がいい。その湯で百合根をゆでます。キクラゲを適当に切り、青ネギは細かく切る。

3) 百合根は半分に切って根が出ている部分を切り取り、あとは手で適当にばらす。2〜3分茹でる。固さはお好みで。

4) 豆腐、百合根、青ネギ、青野菜、キクラゲをボールに入れて、白だしと塩で味をつける。

かつお節のパスタ

とても簡素なパスタです。

貧乏学生時代に仲のよい友人がしょっちゅう食べていて、その影響で作りはじめました。
やみつきになる。

学生時代のはごく簡単なもの。
ニンニクバターにゆでたパスタを放りこんで塩を振り、かつお節と青ネギをのせて醤油を散らす。

それだけでした。
でも、バター・醤油・ニンニク・青ネギの鉄壁の布陣ですから無敵です。
パスタをゆでながら「今日はクリームソースにしようかなーー」とか考えるのですが、
ついこのパスタになってしまう。麻薬のようなパスタです。


今はそれなりに舌も肥えたので学生時代ほど乱暴な作り方ではありません。
それでもコンビネーションの妙で食べたくなる点はかわらない。
ペペロンチーノに匹敵すると思ってます。

温玉や卵黄はなくてもかまいません。




かつお節のパスタの作り方


《材料》(1人分)
パスタ         100g
しめじ         ひとつかみくらい
青ネギ         適量
海苔          1/4帖
かつお節           1パック
にんにく        1片
温玉          1個(めんどくさければ卵黄で代用)

バター         適量
オリーブオイル     適量(バターと同量くらい)
白だし         市販のもの適量
塩           
醤油



【下準備

1) 温玉を作る。わたしは写真の温玉器を使ってます。熱湯を注いで13分で温玉ができる。卵黄にする場合はもちろんなにもしない。

2) ニンニクは包丁の腹でつぶして皮を取り粗みじん。青ネギと海苔はできるだけ細かく切る。


【作る】
1) パスタをゆではじめる。指定時間より1分ちょっと短くゆでる。

2) フライパンにバターとオリーブオイルを入れて火をつけ、ニンニクを焦がさないように炒める。

このパスタにはぜったいにバターが必要です。でもバターだけだとちょっと重いので同量のオリーブオイルと合わせます。

ニンニクに火が通ったらシメジを加えて炒める。


3) パスタがゆで上がる少し前に、フライパンにゆで汁をお玉1杯加え、白だしと塩ですばやく味見をしながら味をつける。フライパンをゆすって湯分と油を乳化させる。

あとで仕上げに醤油を散らすのですが、醤油はあくまで香りづけ
醤油で味をつけようとするとけっこう味がきつくなります。


4) パスタがゆで上がったらしっかり湯切りしてフライパンに放り込み、激しくあおる。またはトングで激しくかきまわす。ソースの乳化を進め、パスタにしっかり食い込ませるためです。その間にかつお節を振って全体に混ぜるようにする。

5) 皿に移したら、ちらりと醤油を垂らして、青ネギと海苔をのせ、まんなかに温玉(または卵黄)を置いたら完成。
今回は温玉が固すぎた


2015年2月11日水曜日

さよならポールスミス

ポールスミス、パルコ吉祥寺店が今日で閉店です。
ポールスミス入口
ほんとうに思い出深い店です。
服を買う経済的余裕ができた十数年前にここではじめて夏物の茶のスーツを買いました。
以来、ずっと通っています。

店長さんとTさんはわたしの服の先生です。
このブログにも何度か書きましたが、特にTさんから学んだことは多い。

「服は3色以内に収めるべし」
とかいうルールなんか「無視、無視」と言って斬新なアイデアを次々に出してくれる。

そのうちにほかの店で買った服をそのまま持ち込んで見せて、
コーディネートをあれこれ相談するようになった。
店が暇そうなときに、
Tさんと二人で店のいろんなシャツやらタイやらをひっぱりだして
コーディネート遊び (?) みたいなことをやったこともあります。
息子のスーツもここで買った。


Tさんは東急の店に移動するのでいなくなるわけじゃない。


でもやはりパルコの店が好きです。



木の棚をはじめとして店内が
昔訪れたロンドンのポールスミスの雰囲気に似ています。
実際、この店は開店するとき、ロンドン店に似せるために棚などを特注したそうです。


最近ではその棚がちょっと古びてきて、
トラディショナルだけどちょっとキッチュなポールスミスの服にますますぴったり合ってきた。こんなすてきな空間がなくなってしまうのはほんとに残念です。

店長さんとTさんと記念撮影をし、
許可をもらって店内の写真も撮りました。


ネクタイはポールスミスではありません。
そしてこの店での最後の買い物をしました。
Tさんが最近わたしに推しているベージュのシャツ。


さよならパルコ吉祥寺のポールスミス。
ここはわたしのファッションの学校でした。




2015年2月10日火曜日

ほんとにほんもの——わさび漬けとお酒

酒は基本的にネットで買います。
10数軒のお気に入りの酒店がある。

伊豆下田の「つちたつ酒店」も日本酒をよく買っていたネット酒店なのですが、
何年か前に楽天から姿を消しました。
どうしたのかなーーとちょっと心配していましたが。
楽天をやめただけだったみたいです。先日サイトに出くわしました。

何年かぶりに注文。

いつぞやこの店に何本か注文したときに、粗品みたいな感じで小さなわさび漬けが入っていました。

わさび好きです。
ローティーンの頃、よく週末に父親が福岡の背振山に連れて行ってくれた。
父は小さな川沿いに上るコースが好きで、なぜかというと、
野性のわさびが群生してるんですね。
ゴツゴツとねじ曲がって巨大なわさびでした。
登山コースのひとつだったのですが、わさびだと気づく人が少ないらしくいたるところにありました。
毎回ビニール袋に山ほど取って帰り、新鮮な野性のわさびをすりおろして刺身を食べた。
葉はおひたしにする。とてもおいしかった。ヒーヒー涙を流しながら食べてました。

40年以上前の話です。
今はもちろんなくなっていると思います。

大人になってわさび園で栽培されたわさびをはじめて食べて、
その小ささと味の薄さに驚きました。

それでもわさびとわさび漬けは好きです。

「つちたつ酒店」が送ってくれたわさび漬けはおいしかった。

どころか。
今までわたしが食べたいちばんおいしいわさび漬けでした。
静岡の「田丸屋金印」だとか安曇野の「高橋わさび店」だとかのわたし好みのわさび漬けと同じ系統の味です。

以来、この酒店で日本酒を買うときにはいっしょに買ってました。

今回もひさしぶりに日本酒といっしょに3個送ってもらった。
マルトクわさび園の「ほんもの」という奴です。小さなパックで330円。
住所からすると「つちたつ酒店」の近所の店だと思います。


写真でわかるでしょうか?
新鮮なわさびがぎーーーーっしり入ってる。
鼻につんと来る。
ほんとに「ほんもの」です!


いっしょに届いた「美田大辛口山廃純米」のつまみにしています。

「美田(びでん)」は福岡県の酒造「三井の寿(みいのことぶき)」の酒です。
山廃やこの酒造については「日本酒のお話」で触れたので繰り返しません。
「三井の寿」はいろんな銘柄を出していますが、
それぞれに味がはっきりちがっていてどれもおいしい。

「大辛口山廃純米」ははじめて飲む銘柄ですが、
いやーー、これもすばらしい酒です。

名前のとおり大辛口。
最近では「大辛口」だとか「超辛口」だとかはめずらしくありません。

でも「美田」は辛口なだけではなくボディーがしっかりしている。
そしてバランスがいい。



酔いがまわったので、ハードリカーにうつりました。
オランダの「ズイダム」というジン。
ご覧のとおりの飴色です。
ズイダムと山羊のチーズ
シングルモルト・ウィスキーやラムはよく飲むのですが、ジンはちゃんと飲んだことがない。カクテルの材料くらいの認識しかなかった。

ズイダムを飲んで、ジンってそれ自体でこんなにおいしいものなのか、と思いました。

ひと月ほど前に買った山羊のチーズが熟成されてきていい具合なので、
ひっぱりだしていつものようにゆずのマーマレードを載せる。
これは鉄板と言えるくらいのコンビネーションです。

この山羊のチーズに丸徳わさび園の「ほんもの」を載せてみました。
けっこういけます。
山羊のチーズが塩気の少ないタイプなので、醤油をひと垂らしするとさらにおいしい。


これ以上飲むとあぶない。
おやすみなさい。



2015年2月8日日曜日

クレメンティア蒲田

先週木曜日の夜、職場の近くのホテルに泊まり込みました。
翌朝ぜったいに遅刻できない重要な仕事があり、天気予報では翌朝積雪のおそれありとのことだったので、何が起きるかわからない車通勤はまずい。

せっかくの機会なのでひとりでちょっとだけ贅沢にコースを食べ、 
早寝するためにベロベロに酔っぱらうことにしました。


というわけで夕方チェックインしたあとで

近くのイタリアン 「クレメンティア蒲田」に。 



蒲田には「聖兆」という文句なしにすばらしいイタリアンの店があったのですがなくなってしまいました。
「オステリア・ウン・パッソ」はおいしい正統派ですがちょっとお高いし店が狭苦しい。
新しい店を開拓したくてネットで調べて「クレメンティア蒲田」に目星をつけました。

コースと言っても店が準備したコースではなくアラカルト。好きな物を注文しました。 


前菜に「野菜のバーニャカウダ」と「サーモンのタルタルサワークリーム添え」。 


バーニャカウダソースは色が薄いアンチョビ控えめなものをグツグツ煮立てたもの。 
なかなか。 


サーモンはスモークサーモンの切り身にソースがかかったのを予想していたのですが、 
刻んだサーモンをタマネギやらと混ぜてシェルクルで丸く固め、 
その上にサワークリームが乗っかっていて、薄切りのカリカリパンにつけて食べる。 

おいしかったのだけれど、ディルがほんのちょっと乗っているだけ。 ディルの香りが苦手な人を考慮したのでしょうか。 
でもせっかく乗せるのならもっと乗せないと意味がない。 そこが物足りない。というか躊躇(ちゅうちょ)が感じられる。 



ここまででグラスワイン1杯。 
無難にシャルドネを頼んだのですが物足りない味でした。 
白のグラスワインの選択肢は二つしかなくて、 
もうひとつの白の説明を読むと、使っているブドウのひとつが「マルヴァジア」。 


去年夏のギリシア旅行記に書いたのですが、
アテネのおいしいタベルナで出会ったべらぼうにおいしい白が 
「マルヴァジア・アロマティカ」。 

そっか、「マルヴァジア」はブドウの品種なんだ! 
とわかったので2杯目はこれにしました。 

アテネで飲んだ白にははるかにおよびませんが、
記憶の中の「いろんな花のブーケ」と共通する花束のような含み香がかすかにあります。 
これがマルヴァジアの特徴なんだろうと思います。


その辺りで 「トリッパのトマト煮」がやってきました。 

何度か書きましたがトリッパのトマト煮で料理人の腕というかセンスがわかる(とわたしは思ってます)。 

内臓の臭みをどこまで取るかの勝負です。 
取りすぎたら内臓のうま味がなくなってしまう。取りが足りなかったらくさい。 
その加減が腕の見せどころじゃないでしょうか。 

「クレメンティア」はその加減が絶妙です。 
ただし、残念なことにオリーブオイルが足りない。 



ここでワイン3杯目。肉料理が控えているから赤。 
「フルボディー」と書いてあったのを頼んだのですがボディーが腰抜け。 
まずくはないんだけど肉に完全に負けてしまいます。



「鶏肉とポルチーニ茸のクリームソース・フェットチーネ」はおいしいです。 
塩加減がわたしにぴったり。 
でも写真で見てわかるとおり、彩りがたりない。 
イタリアンパセリをもっと散らして欲しい。 
サーモンもそうなんだけど、この店、香草の使い方がいまいちです。 



クリームソースが皿に残ったのでパンを頼みました。 
おいしい自家製パン。 

だけれど4切れのうち2つがブドウパン! 
こういうときのパンはソースをすくうものだと思います。 
ブドウパンは不向き。 
また、
脇にオリーブオイルが添えてあるのですが、 
もう1種類のパンともども、オリーブオイルをつけて食べるのにも不向きです。 

なんか、おいしいんだけどポイントがちょっとずれてるなー、と感じました。 


メインのカルネ(肉)は、
腕を見たくて定番の「牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」。 
これはなかなかのもの。 

量もしっかりある。
手をつけてしまったあとの写真
盛りつけはきれいでした
腰抜け赤ワインを早く片づけようと飲んでたら酔っぱらってきたので、写真を撮る前に手をつけてしまいました!


食後酒としてグラッパを注文。
度数の高いグラッパはたいていほんのちょっぴり出てくるのですが、 
店の人とおしゃべりしてたせいなのか、大サービスの量でした。 

香り高くおいしいグラッパ。 
予定通り飲んだくれることができました。 



店は清潔感があります。 

ガラス張りのテラス席。 
春になったら洩れてくる陽の光が気持ちよさそうだなと思いました。 

天候のせいか客はわたしのほかに一組だけ。 



食べて飲んで8000円くらい。 
ひとりで食べると当然割高になります。何人かで来ればもっと安くなると思います。

味は悪くないのでリーズナブルかな。 



ワインが物足りないな。 
一人なのでグラスワインしか頼めなかったので、 
フルボトルのセレクションにはいいものがあるのかもしれません。 

でもグラスワインはその店のワイン観のおひろめみたいなところがありますから、 
あまり期待しない方がいいのかもしれない。 


「食べログ」には店員さんへの不満を書いた口コミが複数見つかりましたが、

わたしが行ったときにかぎれば、店員さんとのおしゃべりは気持ちいいものでした。 
ワインのことや料理のことや、くったくなくなくおしゃべりできる。 
楽しい時間でした。 

ホテルに帰って風呂に入ったらそのまま熟睡。 
ひさしぶりに8時間寝ました。