このブログを検索

2016年12月19日月曜日

重い服の意味——2016秋冬物 その1


しばらく前に卒業生が研究室にふらりと現れました。
雑談の中で、彼女が高校の時の制服について興味深い話をしてくれた。

彼女の出身高校は彼女に言わせると「イギリスかぶれ」で、
制服もイギリスの立派な生地をつかったものだった。
彼女は制服のスカートを短くしようと思った。
制服は某有名デパート(だったと思います)で作っていたので、
そこに持って行って「短くしてください」と言った。

すると店員さんが、
「どうしても短くしたいのならします。
でも、このスカートは生地の重さで形が決まるように作られています。
短くしたらその形が崩れますし、プリーツもきれいに出ません。
それでもよろしいのでしたら短くします」
と言ったそうです。

彼女はうーーんと考えて短くするのをやめにしました。


その話がとても印象に残りました。
彼女の選択も大人の選択だと思いましたし、
彼女を諭した店員さんの教育的配慮も立派だと思いました。



そしたらひと月ちょっと前、
立ち寄った「トモローランド」で、
倉庫に眠っている服をセールにする企画をやっていて、
そこに一着の見事なコートがありました。

定価40数万円が10万円!!

なんでこんなに安いんですか?」と訪ねると
「今の好みは軽さですからこんなに重いコートは売れないんですよ」。

試着するとサイズがぴったり。
卒業生が言ったことを思い出しました。

「でも重い生地って形がビシッと決まってしわが出ないんですよね」
と卒業生の話の受け売り。
実際、鏡に映ったコートはしわ一つありません。

店員さんはうれしそうに
「そうなんですよ。
それにこのコート、仕立屋泣かせのパターナーのデザインなんです。フランスのブランドなのに『ミスター・スミス』っていう名前は変なんですけど」。

悩みました。
でも40数万円のコートを定価で買える身分ではない。
これはチャンスとしか言いようがない。

買ってしまった!!

「トランスコンチネンツ」のストールを合わせました。
メンズのストールは色がつまらないので基本的には女性ものの店で買います。
でもこれは女性の職人さんが作ったものだそうで、
ふわりとした肌触りと色が気に入りました。

はじめて袖を通して職場に行ったら、
なんとその日、
くだんの卒業生が訪ねてきました!!

運命のコートとしか言いようがない。
もちろん、重さの意味を教えてくれたおかげでこのコートを買ったこと、
受け売りの話で店員さんが喜んでくれたことを伝えました。


「トモローランド」のセールではもう一着、半額になっていたジャケットを買いました。
ごらんのとおりのカーディガンみたいな一着。
ヘチマ襟のカジュアルなデザインと、何にでも合わせられる色が気に入っています。



あとは衝動買いで、「ノーリーズ Nolley's」の黄色いダッフルコート。
以前書いたことがあるのですが、
ダッフルコートは、イギリス海軍発祥のコートですから、
北海の軍艦の上でもオーケーな防寒性能と、
かじかんだ手でも留められるようにボタンではなくトグルになっています。


フォーマルなパーティーにも着ていけるネイビーブルーのダッフルではなく、
裏地に遊び心があふれるカジュアルなものです。
それでもこれは本場のイギリス製。
どっしり重い本格的なメルトン生地で、防寒性能はものすごいです。

写真のインディゴ染めのセーターなんかを合わせています。
この「SHIPS」のセーターはZOZOTOWNのセールで買いました。


4 件のコメント:

  1. 数年前、テレ東の番組で『俺のダンディズム』という番組がありました。
    番組内によく出てくるセリフに、
    「ダンディとは男のやせ我慢である」
    っていうのがあるんです。
    カッコよく着こなすには、スカートの重さもコートの重さもある程度ガマンしろよ〜ってことなのかな。
    でも重たいことに意味があって、それを解って着ているからこそ、服がいい味出すんでしょうね。

    返信削除
  2. >すみれさん
    『俺のダンディズム』、存在は知っていましたが見ていません。
    実を言うと「ダンディ」ということば、苦手なんです。
    なんか融通のなさが前面に出ている気がして。

    すみれさんにあえて異論を述べさせていただきますと。
    「男のやせ我慢」はまだまだのレベルだという気がします。

    映画の中のショーン・コネリーは、
    ずっしりと重いであろうダッフルコートを、
    まるでユニクロのコートのように軽々と羽織っていた記憶があります。
    それから服が体に張り付いているかのような胸板の厚さ。

    胸板と強い体幹。
    重い服を「やせ我慢」ではなく軽々と着ることのできる体。
    それこそが服を輝かせるいちばん大事な要素である気がします。

    ジジイの道を進んでいるわたしですが、
    かえって「体がすべてだ」という感慨が強くなってきています。

    気温が低かった今日、
    あの重いコートを着てフラメンコの公演を見にに出かけました。
    楽屋裏を明かしますと、出かける前に体幹と大胸筋の筋トレをしました。
    職人さんが力を込めて作った服へのささやかな応答だと思っています。

    異論にお気を悪くなさらないことを願っています。


    返信削除
    返信
    1. なるほど!
      2年程前に主人とイギリスに行った時、Turnbull & Asserのシャツが欲しいということで、お店に寄ったんです。
      でも主人はヒョロヒョロの痩せた人だったので、肩幅は合っていても胸板が貧弱でシャツのシワがやたら目立ってました。最終的には「ここで買わないで新宿のISETANで買いなさい」と言われ涙(꒪⌓꒪)似合わないと売ってくれないんです。
      やっぱりそれなりの肉体があって服が映えるんですね。

      削除
  3. >すみれさん
    思わず笑ってしまいました。「ここで買わないで新宿のISETANで買いなさい」とは、いかにもジャーミン・ストリートの店らしい台詞です。
    Turnbull & Asserのシャツは知らなかったのですがネットで見ると実に美しいですね!
    でもご主人にかぎらずイギリスで服を買うのはむずかしい。
    体型もありますがなんてったてサイズが違いますから。わたしもロンドンのポールスミスでは買える服がありませんでした。

    その点、ラテン系の男は小柄ですからフランスやイタリアのブランドは気楽です。
    そうは言ってもTurnbull & Asser と同じような面はあるようで、
    わたしの知人もミラノのある店で欲しい服を
    「これはお前には似合わない」
    と言われて買えなかったそうです。
    売るのが第一の日本の店とは大違いで、逆にそこがヨーロッパの店の好きなところでもあります。

    Turnbull & Asserのシャツ、サイズがあればネットで買おうかなと思いはじめました。

    返信削除